海千山千會 - うみせんやませんかい

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BLOG小文

バックパックに僅かな持ち物、風に吹かれゝば備えは少なく心許ない。けれど僕は旅する自由を
好んで久しい。生涯を通してそうありたいと思う。ある時は重い荷物を背負って息が詰まりそう
だった。ある時は空っぽの中身に不安で眠れぬ夜を過ごした。ああしよう、こうしようと思って
動いてみても上手くいった試しはなかった。世の中の決まりごとには身体が従わず、書物に答え
を求めても未だ心の平安は得られずに居る。ついに無能無藝にして天地自然に逆らわず、一筋に
進む道より他ないと思った。伊能忠敬の測量における、松浦武四郎の北海道探検における、浅川
伯教・巧兄弟の朝鮮陶器研究における、宮本常一の現地調査における、その道を貫く物は一つだ。
本当の旅とは囚われない目を持ち世界を見つめる事だと、先達の背中をみてそう思った。心がけ
次第で見るものすべては花となり、美しい月のように現れるだろう。僕はいつでも旅をしている。
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